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言葉、ことば、コトバ!第13回

「対抗とは何か?(・・;)」

皆さまのお言葉をいただき、源氏物語をめぐるあれこれをつづっていくことにした。

今日もおたずねしてみるのだが、紫式部清少納言をライヴァル視し、源氏物語を書いた、という。みんな、素直に聞き流している。

しかし、対抗するのに小説を書いたというのはどういうことなのだろう?(・・;)

清少納言枕草子は小説ではなく、彼女の和歌や漢詩を含んだエッセーである。

実は紫式部源氏物語とは別に紫式部日記という枕草子に似た作品を書いているが、枕草子源氏物語の知名度には及ばないだろう。

ところで、枕草子とは意外と読まれていない作品である。

枕草子はどういう作品ですか?と聞かれたら、何と答えるだろうか?

枕草子は大きく、3つのパートに分かれる。日記、随筆、ものづくしである。

日記は素直に理解出来る。一条帝、皇后定子、中関白道隆、そして藤原道長紫式部、またたくさんのボーイフレンドたちとの交流を描いた記録である。これらは正式な歴史書や、公文書などと照らし合わせても、かなり正確な記録であり、歴史の証言でもあるものである。

随筆は厳密に日記と分割するのは難しいのだが、いつの記録かハッキリしないが、彼女にとって印象的だったものの記録である。

さて、そこでものづくし、これは学校の先生とかもよくわかっていないものである。(・・;)

山は、とか、可愛いものは、とか彼女がお題を設定し、そのお題の答えを書き尽くしていくのである。ただ、列挙してあるだけの場合もあるが、基本的にこの山にはこういう伝説があるとか、この花は有名な漢詩や和歌に引用されているとか、彼女の教養が書き添えられ、王朝の貴族から庶民まで有名な名所や話を学べる、教養を得られるものだった。

ところが、この先が学校の先生とかは知らないのだが、彼女のものづくしが大ヒットしたから生まれたのか?先にそれが大ヒットしたからものづくしを書いたのか?にわとり卵なのだが、謎々歌というのがあった。

これはホニャララは?と謎めいたお題を出し、下の句でなるへそ!(・・;)と思える解答を出して、遊ぶものだった。やがて、これは博打、宝くじ的になり、お題が社会に発表され、みんなが解答を考え、一番上手だったものが景品や賞金を得るという遊戯で、江戸時代も幕府が取り締まろうとしても根強くブームは続き、平成の御代の日曜夕方の笑点にまで、連なる立派な系譜である。(・・;)

これの歴史上の代表作がまた紫式部清少納言のドラマなのである。

藤原道長は基本的にパッパラパーであった。歴史書とかはぼやかして、豪快、陽気、おおらかみたいに書いているが、パーであった。(・・;)

冬の日を春より長くなすものは恋ひつつ暮らす心なりけり(道長)

シンプルで翻訳もいらない。短い冬の日を長く長く感じさせるもの、それはあなたに夜になったら逢おうと急く心ですよ。(・・;)

これは誰に贈ったのか、よく分からない。土御門倫子、高松殿明子といった妃に贈ったのかもしれないが、紫式部に贈ったのかもしれない。

しかし、紫式部は誰に贈ったにせよ、清少納言お家芸である謎々歌を道長が作ったこと自体に激怒、疑い、嫉妬など抱いたのは言うまでもない。

紫式部は恨み深く、彼女も謎々歌を作っている。

数ならぬ身をば心に任せねど身に従ふは心なりけり(紫式部)

数ならぬ私の身分では心に浮かぶあれこれの欲望や感情に身を任せることは出来ないけれど、自由にならない身の上に沿って変化してくれるもの、それは心です。

これは二百年後の天才藤原俊成が絶賛しているが、確かに道長の歌などより、哲学的に深い。(・・;)

しかし、紫式部は執念深い性格で道長にパパッと言い返して、スッキリするような、女ではなかった。

何、清少納言の謎々歌なんか詠んでるの?あの女、私の旦那がカッコいいカッコいいとしきりに吹聴しているけど、まさか、まんざらでもないと思っているんじゃないの。まさか、あの女に代作してもらったのでは?

紫式部は寝苦しい夜を過ごした。その時、意識のそこで何かが明滅した。そうだ、私もものづくしを書こう。それも清少納言も思いつかなかった究極のものづくし。最高の美男子がいて、あらゆる世の中の恋が描かれるものづくし。恋のものづくし。それに源氏物語と名前をつけよう。何しろ日本人は恋が一番好きなのだもの。

その結果が千年のちの今の評価である。大勝負に出た紫式部は勝ったのである。

源氏物語は実は枕草子がなかったら、成立しなかった。

例えば、教科書でやることが多い、光源氏が幼い紫の上を見ているシーン。その時、教科書ではやらないが、源氏の召し使いたちは諸国の名山ゆうたらどこどこやで、と会話の中で山づくしを始める。念入りに清少納言より詳しく、解説し、清少納言が書きもらした山を丁寧にいくつかつけくわえる。本当に執念深い女。

しかし、随所に源氏物語の中のものづくしは出てくる。

紫式部清少納言に対抗しましたという一節にもこんなドラマがある。

ところが!(・・;)

ここで、ちゃぶ台返し紫式部には清少納言などどうでもよくなるような怨敵がいたのである。

それは誰か?(・・;)

次回に続く。